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    鬼の権六

    • 2001.05.19 Saturday
    • 00:43
    子どもが小学校に上がる前は、
    寝床でよくおとぎ話をしてやったものだ。

    しかし最近はネタ切れで、
    子どもにせがまれても
    なかなか応じてやることができない。

    「お父さんなにかお話ししてよー」
    「うーん、そうだなー」
    「お願〜い」
    「よし、じゃあ…」
    「やったー」
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    生きるということ2

    • 2001.10.23 Tuesday
    • 09:37
    友人の祖母が突然亡くなった。

    少し痴呆が始まってはいたものの
    身体は元気で、
    よく近所を散歩していたそうだ。

    しかしときどき
    どこへ行ったか分からなくなって、
    家族に迷惑をかけることも
    あったらしい。

    「こう言っちゃ何だが」
    と、友人は切り出した。

    「…?」

    「一番ほっとしたのはお袋だったかもな」

    「…」

    「不謹慎かもしれんが」
    と、彼は視線を落とした。

    私は、ちょっと困ってしまって
        俺には何も言えないよ」
    と答えるしかなかった。

    すると彼は少し笑って、言った。
    「ハハハそうだな」

    「…」


    「でもなぁ」

    「…?」

    「朝、玄関の靴をさ」

    「…」

    「ばあちゃんが死んだ次の日   

    「…」

    「誰が揃えていたのか判ったんだ」

    「…」


    「家族が出かけるとき履きやすいように」

    「…」

    「一人一人の靴を、
     ちゃんと前の方に向けて」

    「…」


    「きれいに揃えてたんだ。毎朝」

    「…」


    「頭の呆けたばあちゃんがさ」

    「…」



    「それを」

    「…」

    「俺たち家族は誰も   


    「…」


    「ばあちゃんが死ぬまで」

    「…」


    「ずっと気づかないで」

    「…」


    「誰からも
     『ありがとう』って言われないままで」

    「…」


    「ばあちゃんは   



    そう言うと友人は拳を握りしめ、
    目にあふれる涙をぬぐった。

    ロマンチックな夢

    • 2001.10.28 Sunday
    • 21:26
    「いつまで意地はってんだ。
     彼女行っちゃうぞ!」

    お節介な友達の電話に背中を押され、
    雪が降り始めた夜の街を、
    駅へと自転車を走らせる僕(当時19歳)。

    入場券を買うのももどかしく
    ホームに飛び出すと、

    足元に大きな鞄を置き、
    手に息を吹きかけながら
    たたずむ彼女の姿。

    まだあどけなさの残る顔で、
    彼女がゆっくりと振り向く。

    僕は彼女に駆け寄り、
    その細い身体を抱きしめる。
    「ごめんよ! もう離さない。
     そばにいてほしいんだ…」

    目に涙をいっぱいに溜めながら、
    笑ってうなずく彼女。

    雪が降りしきる駅のホームで、
    いつまでも抱きしめ合う二人…。




    そんな甘い記憶が、
    夢の中でよみがえることがある。

    想い出は、いつだって美しい。

    だけど、

    熱い抱擁から身体を離し、
    あらためて彼女を見ると、

    その顔が妻に変わっていたりする




    ロマンチック・ストーリーが、一瞬でオカルト・ホラーへと。

    いい人

    • 2001.12.22 Saturday
    • 00:56
    彼女は、私以外の男性を選んだ。
    幸せな結婚のはずだった。

    しかし、しばらくすると
    よくない噂を耳にするようになった


    そんな折、街でばったり彼女に出会った。

    見違えるように美しくなっていた。

    「お茶でも飲まない?」

    私は、彼女にフられた傷が
    まだ完全に癒えてはいなかった。

    「幸せなの?」という言葉を、
    何度も言い出しかけては飲み込んだ。

    でも、けっきょく最後まで訊けなかった。


    そんな私の気持ちを知ってか知らずか
    彼女が別れ際に呟くように言った。

    「ROKUさんていい人ね」




    ずっと昔の話だ。




    数年後、彼女は死んだ。
    ちょうど今日のように寒い日だった。
    理由はわからない。

    ただはっきり解っているのは、
    どんな状況になっても、彼女は決して
    私を選ばなかっただろうということだ。

    彼女にとって私は、「いい人」
    以上でも以下でもなかった。

    君がいるだけで

    • 2002.06.05 Wednesday
    • 11:45
    まだ君と出会う前のこと。

    最後の失恋をしたときのことだ。

    自分で勝手に盛り上がって、
    自分で勝手にすっころんだ。

    でも、思いのほか
    傷は大きかった。

    「自分は、誰にも
     必要とされていない…」

    透明な寂しさに
    こころ囚われた。

    無気力な笑顔を
    浮かべながら、
    そのくせ、いつも
    何かにいらついていた。

    親しい人たちは、
    僕のことを、まるで
    腫れ物に触るように
    扱った。

    それがまた返って
    腹立たしかった。



    でも、仕事は
    ちゃんとしていた。

    保育所の設計を受注して、
    視察調査に行った。

    県北にある
    小さな保育所だった。

    園長さんや保母さんに
    話を聞いたり、
    メジャーで寸法を測ったり、
    そんな作業をする僕の周りに、
    子ども達が集まってきた。

    「お客さんが珍しいんですよ」
    と、保母さんが笑った。

    作業を終えて
    帰り支度をしているとき、
    一人の園児が
    僕の上着の裾を掴んだ。

    僕は
    「もう帰らないといけないから」
    と言って、その子に笑いかけた。

    でもその子は
    上着の裾を離そうとしなかった。


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    文学する私

    • 2002.07.31 Wednesday
    • 09:58
    そりゃあ私だって世の中には平気で他人のものを盗ったり人を殺したり出来る人間の居ることくらい存じております。しかしいま私の眼前にいる貴方がそのような方だとは思いたくもないし信じたくもない。だってさうぢゃありませんか。人と人の出合ひの時に先づ疑ったり警戒したりするのはあまりにも悲しいことでせう?

    嗚呼どうしてそのようなものを私に向けるのですか。私と貴方の間には憎しみも恨みもない筈ぢゃありませんか。此処でかうして出合ふまで元来何の関係も無い二人ぢゃありませんか。お止めください。止めて。止め

    あっ…。




    続きを読む >>

    君がいるだけで2

    • 2002.12.29 Sunday
    • 11:46
    まだ君と出合う前のこと。

    その頃僕はまだ十代で、
    学生だった。
    海辺の町で、間借りして
    一人暮らしをしていた。

    ちょうど今夜みたいに
    やたらと冷え込む晩だった。

    お腹が空いたので、一人で
    ラーメンでも食べようと、
    近所に新しく出来た店に入った。

    「いらっしゃいー」
    と、声がした。

    他の客は全然いなかった。

    中年のおばさんが、
    カウンターの中から
    こちらを見て、なぜか
    驚いたような顔をしている。

    「ラーメンください」
    と、僕は腰掛けながら言った。

    「…あ。 ラーメンね」
    と、おばさんは
    はじかれたように言い、
    調理場の奥を見た。

    そこには、ご主人らしい
    初老の男性がいて、
    僕の顔を見たとたん
    やはりびっくりした表情を
    浮かべた。
    続きを読む >>

    あの唄はもう唄わないのですか

    • 2003.05.15 Thursday
    • 23:23
    夜。大通りの交差点近くの
    ありふれた喫茶店。

    「明日だね。いよいよ」
    と、里美。
    「うん    
    隆二は窓の外を眺めている。

    「荷造りは、済んだの」
    「うん」

        新聞、読んだよ」
    「うん…」
    「きっと、大丈夫だよ。売れるよ」
    「うん…」

        あのね」
    「…」
    「あの…、あのね」
    「…」
    隆二はコーヒーを啜った。

    里美は目を伏せて
    スプーンをかき回しながら、
    口を開いた。
    「あのね、追っ…」
       

    「…なんでもない」

       

    「気にしないで」

    店のドアがからんと鳴る。

    「隆ちゃん、やさしいから」
    と、里美は少し笑った。
    「…」
    「だから、言っちゃいけないんだ」
    「…」
    「邪魔だよね。足手まといだもんね」
    「…」

    里美はスプーンを持ったまま
    ほおづえをついて、窓の外を見た。
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    みんな知ってる。でも(1)

    • 2003.05.30 Friday
    • 00:02
    みんな知ってる。
    でも言っちゃいけないことって、ある。

    お父さんとお母さんが、夜中、
    ボク達の寝たあとチューしてることとか。

    でも、そんなことより
    すごくショックなことが、こないだ
    あった。


    「知らないのかね大人はみんな
     ほんとうは戦争が大好きなのだよ、
     しっしっし」
    とその男は笑いながら言ったのだ。

    「そんなことはないよ。
     そうじゃない人も中には
     いるかも知れないけれど、
     戦争をなくするために大人はみんな
     がんばってるよ」
    ボクはそんなふうに反対したんだけど。

    「それは表向きの話さ、しっしっし。
     まあ見てろよ。もうじき
     すぐ近くで戦争が始まる。」

    「どの国とどの国が戦争するの?」

    「そんなことはどうだっていい。
     かんじんなのは、
     戦争がどれくらい続くかだ」

    「短い方がいいよね。
     人が死ななくて済むから」

    「いや。あまり短いと困る」

    「どうして?」

    「それはだね。
     わが国が持っている物や人を
     戦争に利用してもいいっていう法律を
     せっかく作ったのに、
     それを使う前に
     戦争が終わってしまったりしたら…」

    「…?」

    「それに、建物や橋や鉄道や道路が
     たくさん壊されたりしないとダメだ」

    「どうして?」

    「知りたいかね」

    「う、うん…」



    みんな知ってる。でも(2)

    • 2003.05.31 Saturday
    • 23:59
    (昨日からの続き)

    男は続けてしゃべった。

    「戦争をするには
     戦車や戦闘機だけじゃなく、
     普通の自動車や機械も
     たくさん必要なのだよ。
     それに、食料や衣服も。

     道路や建物が壊されるから
     戦争が終わったら
     そういうものを
     また作らなければいけない」

    「…」

    「すぐ近くで戦争があるということは、
     そういったものをどんどん作って
     どんどん売れるってことなんだ。

     つまり、お金が儲かるんだよ。

     そうして景気がよくなれば、
     仕事がなくて困っている人も助かるし、
     お父さんやお母さんの給料も上がるし、
     みんなもっと豊かになって
     幸福な生活を送れるようになる。
     いいことずくめなのさしっしっし」

    「…」

    「だから、大人はみんな
     口ではきれい事を言いながら、
     心の中では戦争を望んでるんだよ。
     しっしっし」

    「…」

    「わかったかね」

    「…でも、でも戦争だから、やっぱり
     人がたくさん死んだりケガしたり
     するんでしょ?」

    「ああ。でも
     それはほとんどよその国の人だから
     気にすることはないよしっしっし。

     …まあ、わが国にも少しは
     被害が出るかも知れないが、
     多少の犠牲はしかたがない」

    「ボクは」

    「…」

    「ボクはイヤだ」

    「大丈夫だよしっしっし。
     わが国が戦場になることは
     ありえない」

    「そんなことじゃないんだ」

    「…おやおや、どうしたね。
     景気がよくなれば、ゲームソフトも
     いっぱい買ってもらえるよ」

    ボクはもう何も答えたくなかったので、
    そのいやな笑い方をする男に
    あいさつもしないで背を向け、
    走って家へ帰った。



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